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真水 / Mamizu

by Sori Sawada

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1.
嗚呼、手を繋いで花火を横に持った。 繋いだ、握り込んだ、右の左手は湿った。 八月の夜みたいに。 手持ち花火みたいに。 行方知らずの打ち上げ花火が 私みたいだ、と笑った。 夜を舞った花びら、一つ。 今日を待った言葉を一つ。 花火から遠ざかろう。慣れない下駄で走ろう。 せめて一言、伝わるように。 「じゃあ」手を放した。夏の匂いが去った。 二人は帰路に就いた。逆側の駅を目指した。 今、その袖を掴んで逃げ出してしまおうか。 反対方向、走り出す。あなたの背を追う。 不意に柳が映った。 夜を舞った花びら、一つ。 今日を待った言葉を一つ。 「どうせなら一緒に居よう。朝まで一緒に居よう。」 祭りが終わっていく。 私たちは逃げていく。花火から、この夜から。 この、歯がゆい関係から。 背後で最後が鳴った。明くる空と音で分かった。 今は、振り向かないように。 指を絡めて、逃げた。 夜を舞った花びら、一つ。 今日を待った言葉を一つ。 花火から遠ざかろう。慣れない下駄で走ろう。 せめて一言。 行く宛てのない夜を走る。 掴まらないようにと走る。 何も意味がなくても、あまりに儚くても。 それは私の生きる糧になった。
2.
私、大嫌いなあなたの悪口を言いまくって でも最後まで残っていたのは、やっぱり惨めな自分で 置いてかないで ねえ、行かないで 今まで一度も 君の方からいなくなるなんて、思いもしなかったんだ あぁ、それは7月の少し暑い日で 瞼は汗か涙でぐしゃぐしゃに濡れて あぁ、いつもの得意な嘘だと思ってた あなたは顔も上げずに謝ってたのにね 私、大嫌いなあなたの悪口を言いまくって でも最後まで残っていたのは、やっぱり惨めな自分で 置いてかないで ねえ、行かないで 今まで一度も 君の方からいなくなるなんて、思いもしなかったんだ 得意気に笑って、誤魔化してるのね 本当のことを隠しているくせに 素知らぬ顔をして、自分勝手にまた 追いつけないほど遠くを歩くくせに 私、大嫌いなあなたと毎日口喧嘩して でも最後には笑えるなんて、勝手に思っていたんだよ 置いてかないで ねぇ、謝るよ 私は一度も 君の方からいなくなるなんて、思いもしなかったんだ 私、大嫌いなあなたの悪口を言いまくって でも最後まで残ってたのは、やっぱり惨めな自分で 置いてかないで ねぇ、言わなくちゃ 今まで一度も 君の方からいなくなるなんて、思いもしなかったんだ いつも大嫌いなあなたと、君を想い続ける私は
3.
まずは片足から。そんなふうに いつから君の方へと寄りかかっていた。 それは、歪みがかる遠い記憶。 花束を揺らす。あなたは泣いていたんだね。 赤に、黄色に、紫が交じる。 私はそれを両手を塞げて貰うんだ。 あなたの言葉に何度も頷くだけで安心していた。 始発のベルはあなたを連れて。 渡した言葉は花になって、二人の誓いは灰になっていく。 残った、花便り。 あの日、私たちは背伸びをして ネオンが揺れる街並みに魅せられていた。 名前も知らない歌、恋の歌を 「大事にしよう」と君と手を繋いでいた。    擦れて、くすんだ微温い灯が君を 連れ去った後、不意に花便りが届く。 雨を探しては何度も悟られないように涙を吐いた。 いずれは見つかってしまうけど。 それで振り返る君なんて、そんな君ならいらないから。 足跡は自分で見ないで。 私が追いかけるためだけに残して。 あなたの言葉に何度も、頷く私は弱い子だから。 見送る背中、心は揺れる。  渡した言葉は花になった。伝えたい言葉は花のようだ。 だから一人、雨を待つ。
4.
friended 02:47
あんたの中には僕はいないが 僕の中には未だにいるんだ。 褪せない、癒えない話ばかり。 言えない僕が悪かったんだ。 あんなに綺麗に着いた火だって あんたが居なけりゃ、ただの日だった。 甘ったるいシャンプーの匂いが、嫌じゃなかったんだ。 コーヒーくらい飲めるようになりなって 笑われたのが、幸せだと思ったんだ。 砂糖がいらないほど。 上品な大人になってみたいって 口を開けて笑う僕らは二十歳になった。 ねえ、あんたの中には僕はいないか。 どっか隙間に見落としてないか。 拙い、見えない話ばかり。 いっそ離れてみやしないか。 あんなに大事にしてた日だって あんたにしてみりゃ狎れ合いだった。 微々に甘い香りを残して、君は去っていくんだ。 I think we are good friends. 36℃が体からいなくなったみたいだ。 食器も、コップも増えたんだ。 一つ減ったから、増えたんだ。 上品な大人になってみたいって 口を開けて笑う僕らはもう居なかった。 なあ、あんたのせいにはしたくはないが 他に代わりが見つからないんだ。 解せない、いらない話ばかり。 どこで道を間違ったんだ。 あんたが綺麗にしてた部屋には あんた以外の荷物が残った。 減らない、消せない思い出の類が多過ぎるんだ。 あんたの中には僕はいないが 僕の中には未だにいるんだ。 褪せない、癒えない話ばかり。 言えない僕が悪かったんだ。 あんなに綺麗に着いた火だって あんたが居なけりゃ、ただの日だった。 散々に甘い生活を残して、君は去っていくんだ。
5.
cinema 03:44
玩具の鉄砲と紙飛行機 それだけで充分だった 煉瓦の建物 古びた窓 『綺麗だね』 汚れたままで まだ知らない感情に 胸を焦がしてみたり まるで映画のように子供ふたり 廃れた街に逃げ込み、走って 太陽が昇りきる前に 幼い口づけを交わしてた 雑音に混じって消えた雨音 まだ消えない昨日の残り香 排気ガスの色 暮れの空き地 『どれもこれもが大切ね』 まるで絵画のような街にふたり 草臥れた靴 歩いた 笑った 夕闇に飲まれないように 泣いてもいいかい 君が想い出になる前に 捨ててもいいかい あの日の映画のチケットは 捨てれないな。
6.
それは悲しい話のようで 救われない結末で 白い壁と呼吸器と 「忘れないよ」 「忘れるもんか」 此処は命の枯れる場所 想い出が潰えるよ ほら 不自然なほどに身体は 痛みを感じないまま さよならじゃない。別れにもならない。 一緒に今日を過ごしすぎただけ 「また会おうね?」 オートハート 二人はそっと 壊れない程度に距離を保って お互い、真実を閉じ込めて 飯事を続けて オートハート あなたはきっと 諦めることを許さない 私は、君の中でいつまでも 想い出になれないから 生きられはしないから それでいいよ あなたの声 靄に濡れた 生きられないことを知る 白い壁も呼吸器も 外さなくちゃ 受け入れてよ 此処は命を繋ぐ場所 想い出は磨り減って もう 不器用なあなたはとても 震えた声で話すのね オートハート 私はまるで 君を縛り付ける糸のようで 最後の一秒まで君は 何処にも行かないね オートハート あなたはずっと 愛と過去を括りつけて 私を、ずっと待つのでしょう 信じないで 見限ってよ 嘘つきにもなるよ だから それは悲しい話のようで 救われない結末で 花束が揺れるベッド 「忘れないよ」 「忘れるもんか」
7.
君が髪を切った理由を僕は聞けない。 あの長い髪はよく似合ってたけど。 それは、多分あいつのせいなんだろうな。 あぁ、悔しいな。 君が髪を切った理由を僕は聞かない。 誰かの好みか、それとも失恋か。 やっぱ、長い方が似合うと思うなぁ。 僕はそう思うよ。 待ち合わせには遅れない。 無責任な言葉も使わない。 なるべく引っ張っていくから。 転びそうなら手を貸すよ。 だからといって、君の隣に居られるわけじゃない。 わかってる。泣き言くらい、言わせてくれよ。 誕生日も忘れずに。 記念日だってちゃんと祝おう。 花束を持っていくから。 話だって真面目に聞く。 わかっているんだ。 今、ここにあるのは君が髪を切った事実だけ。 君の好きな歌が、今じゃ僕の好きな歌だ。 そうやって、君は前に進んでいく。 いつの間にか、君より詳しくなっていた。 笑ってくれよ。さよなら程度も出来なかったんだ。 待ち合わせには遅れない。 無責任な言葉も使わない。 なるべく引っ張っていくから。 転びそうなら手を貸すよ。 だからといって、君の隣に居られる僕じゃない。 わかってる。僕はあいつにはなれない。 悔しいけど、認めるよ。 短い髪もよく似合ってた。 ちゃんと、上手くやっているみたい。 寂しいけど、嬉しいよ。 わかっていたんだ。 今、ここにあるのは君が髪を切った理由だけ。 僕も、歩いてみるから。 苦しくて、光っていた日々を切って離すよ。 じゃあね。 君が髪を切ったのは。 好きでよかった。本当に思うんだ。 心に灯が残らないように。 君が髪を切った理由を僕は聞かない。
8.
上がれば眩しくて。 思わず、目を閉じた。 背伸びした君がはにかむ。 花火が見えないと言う。 「花緒が指にかかって痛い。  それでも、あなたと居たかった。」 湿った浴衣。 夜空に急に咲く花火。 繋ごうとすれば、繋げる手。 途切れ途切れの会話。 次の一発が鳴る前に 言いたいことがあるよ。 さよなら以外なら、何でもよかった。 良かった、よかった。あなたも同じみたいだ。 人の群れに逆らい、歩いていく。 生きているみたいだ。 繋ごうとすれば、繋げる手。 途切れ途切れの会話。 僅か一投の花火さえ 永遠のような光。 このまま二人、夜を跨いで 逃げてしまおうか。行ってしまおうか。 言ってしまおうか。 笑顔が眩しくて。 思わず、目を奪った。 明り散る花を見つめる 君しか見えないのだ。 離そうとすれば、離せる手。 だけど、今は委ねた。 跳ねる一瞬の閃光に 見失わないように。 繋いたまま、離れないまま。 遂になくなる会話。 始発電車を待つ夜に 言いたいことがあるよ。 思えば、楽しくて。 想えば、苦しくて。 明けていく空が、綺麗だ。 絡めた手はそのまま。
9.
思えば後悔は、二つくらいしかないな 誕生日プレゼントが、渡せそうにないこと あなたに見せたかった服が、無駄になってしまったこと さよならしなきゃいけないこと あぁ、これで三つめか まあいっか あなたのせいで、部屋を片さなきゃならないよ あまり時間がないのに、なんてことすんだ でも冬が濃くなって、そんな話を切り出されたら 次こそは泣いてしまうから 春じゃダメですか いやいや、春の陽気に中てられたら 流石のあなたも、言いにくいだろうから 夏にしよう 涙も汗と一緒に紛れるから でも、暑いのは嫌だから秋にしようよ なんて、言ってみただけだよ あなたと過ごした36ヶ月の中に 半生分の幸せと、一生分の後悔が 穿って、育って、白斑の花が咲く 私だけだったのかな あなたと暮らした36ヶ月の日々は 一生分の幸せだ 二度とはない僥倖だ それは、変わらないから 明日には捨てるから 黙って頷いて、今は話を聞いてよ 不思議とその時がきたら、簡単に泣けないもので さいあく泣き落とそうと考えた自分が恥ずかしい 胸にある悲しみの容量なんて飛び越して 涙より先に「ふざけんな」なんて わかってる ふざけてるのは、私だ だらしない寝顔 片っ方を探す靴下 絶対言わない「ありがとう」 たまにくれる花の束 そうやって、いつだって、生きてきたはずでしょう? 歩んできたはずでしょう? また同じ話、何回聞いても飽きないよ 水道水のような日々、炭酸のない恋の歌 味のないガムでも私はいいんだよ 捨てるくらいなら飲み込んでしまえば、なんて 思えば後悔は、二つくらいしかないな 誕生日プレゼントが渡せそうにないこと あなたに見せたかった服が、無駄になってしまったこと あぁ、それからね 友達としても会えなくなりそうなこと あなたの中の私は、意外と小さかったこと 言いたいことも、言われたいことも、尽きないくらいにあったこと まとめれば一つだけなんだよ 未だ好きだったんだ あなたが残した3年分の思い出が 一生分の幸せが、一生分の幸せが またねがあれば、なんて足掻くよ あなたがくれたね 何回言っても足りないや 一生分の幸せだ 紛れもない幸福だ 言い慣れないけれど、またねはないけれど 最後は私の方から「ありがとう」を言うから あなたも笑ってよ 重くならないように言った 上辺だけのさよならじゃ どれも意味を成さないんだよ それじゃあね
10.
緩んだ蛇口から、零れていった。 気付いたらもう底を突いたんだ。 終点だった君の駅には 今じゃ知らない風景がなかった。 「久しぶりね。私たち、あまり会わなくなったね。  言葉だけの関係で、どこまで行けるのかな。  私たち、なんで二人でいるんだろうね。」 話がしたいと言う。君が、笑って言う。 今まで見た笑顔で一番下手くそだった。 泣き虫だった君だからこそ、誤魔化せないと思った。 終わってしまうんだね。 僕らは真水に浸かってた。 変わらないことがさ、必要だと思い込んでいた。 いつか、いつか、またねがあれば。 なんて言えないよな。 「ねぇ、私たち友達だったら  今より上手くやれた気がする。多分。  言いたいことを言い合って。  喧嘩をしても直ぐに謝って。  あぁ、もうやめにしよっか。こんなの。」 味がしないままの生活が 意味なんていらないはずの生活が 日ごと、色を変えずに腐っていく。 僕らは、水にはなれなかった。 話は終わっていた。君は、黙っていた。 笑っていれば、かわいい女でいれたことくらい わかってる君だからこそ、言葉に詰まったんだ。 終わってしまうんだね。 怒ってよ。叱ってよ。喚いてよ。 口を結ぶ癖でわかった。泣きそうなんだね。 じゃあね、なんて軽い別れが 何故か似合ってんだ。 僕らは真水に浸かっていた。

about

真水 / Sori Sawada

01. 花火から逃げて
02. 転校前夜
03. 花便りが届く
04. friended
05. cinema
06. オートハート
07. きみのかみ
08. 鞋
09. またねがあれば
10. 真水

friended : www.nicovideo.jp/watch/sm32457389

credits

released December 29, 2017

Mastering : Matthew Coxwall Studio
Photo model : nogami

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